醸造所

ビアバーの視点で見る 実際に "売れるビール" とは何か

Peter

2026/2/10

JAPAN BREW EXPO 2026 買い手・パネルディスカッションからの実践的な学び

Best Beer Japan "売れるビール"のセミナー

セミナー開催の背景

良いビールが、必ずしも売れるとは限りません。

JAPAN BREW EXPO 2026 にて Best Beer Japan は、「ビアバーは実際にどのようにビールを比較し、評価し、仕入れを決めているのか」というテーマでパネルディスカッションを開催しました。

醸造技術やブランドストーリーではなく、現場の“買い手”の視点から、

  • どんな情報があれば仕入れ判断ができるのか

  • なぜすぐ動くビールと、そうでないビールがあるのか

を、実際の商品ページを見ながら率直に議論しています。

モデレーターは Best Beer Japan 代表取締役のピーター・ローゼンバーグ。

パネリストとして、日本国内で高い売上を上げているビアバー運営者が登壇しました。

  • 株式会社ステディワークス 副社長/Craft Beer Market 運営 大倉 勇二 氏

  • ビアブルヴァード株式会社 代表取締役/BEER BOULEVARD GINZA 佐藤 裕介 氏

  • 株式会社ワンダーパワードユー スーパーバイザー/WPU CAFE&BEER DINER 丸山 未樹 氏

  • 株式会社74WORKS 代表/NUMBER 6・FRANK’S BARBE(E)R THE STAND・huit 運営 関口 康啓 氏

本記事では、このセミナーで共有された内容をもとに、醸造所がすぐに実践できる具体的なポイントを整理します。


第一印象は 5〜10 秒で決まる

ビアバーは、商品説明をじっくり読み込んでいません。
スキャンしています。

パネリストから繰り返し語られたのは、特に複数のビールを同時に比較する場面では、 最初の判断は 5〜10 秒以内に行われている という点でした。

そのため、次の 3 つが極端に重要になります。

  • 最初の画像

  • 最初に表示される画面

  • 最初の数語

スクロールしたり、文章を読まなければビールのイメージが掴めない商品ページは、評価しづらくなります。一方で、ビールの「役割」や特徴が一瞬で伝わるページは、次の判断に進みやすい。

結論はシンプルです。

瞬時に理解できないビールは、選ばれません。


情報は「流し見」できなければならない —— 画像が果たす役割

セミナー全体を通して最も強く共有されたテーマのひとつが、情報量の多いビジュアルの価値でした。

パネリストが一貫して高く評価したのは、次のような商品ページです。

  • ビールの色がすぐに分かる

  • 缶やラベルのデザインからコンセプトが伝わる

  • 味わいの方向性が視覚的に示されている(チャート、星、タグなど)

テキストを読まなくても、トップ画像 1 枚で仕入れ判断に必要な情報が伝わるページが好例として挙げられました。

これはデザインの流行の話ではなく、判断時の認知負荷を下げるための実務的な工夫です。

"売れるビール"の商品ページのレビュー


パネリストによる商品ページの具体的なコメント

大山Gビール
トップ画像だけで、ビアバーが仕入れ判断をするために必要な情報が一目で分かる点が高く評価されました。

VERTERE
コンセプトがすぐに伝わる短く整理された説明。ビアバー・酒販の双方に必要な情報が揃っており、特に酒販目線では JANコード、賞味期限、消費税込・税抜価格が明記されている点が評価されました。

BrewBeast
全ラインナップで写真のトーンが統一されており、ビールの色味と缶デザインが分かりやすい。ビアバー、酒販の両方にとって扱いやすいとの評価。

京都醸造所
大きなフォントでビールのコンセプトが示され、スタイルの特徴もシンプルに伝わるメインビジュアルが好印象。

Fetish Club
星チャートによる味わい表現が非常にスキマブルで、複数ビールを横並びで比較しやすい点が評価されました。

城端麦酒
メイン画像から、どのような味わいを想定すればよいかが直感的に理解できる構成。

ひみつビール
可愛らしく親しみやすいビジュアルで、クラフトビールに不慣れな人でも選びやすい。デザインの統一感と、各ビールのコンセプトの分かりやすさが評価されました。


アルバイトやビール初心者でも説明できるか?

セミナー中、何度も立ち返った現実的な視点があります。

あなたのビールを説明するのは、メニューを書いた本人とは限らない。
そして、必ずしもビールに詳しい人でもありません。

商品説明は多くの場合、

  • メニュー用に短縮され

  • タップボード用に書き換えられ

  • アルバイトによって口頭で説明され

  • 初めてそのスタイルに触れる人に使われます

そのためパネリストが強調したのは、50文字程度で何が残るかという発想でした。

  • すべて削られても残すべき情報は何か?

  • 伝えたいメッセージは一つに絞れているか?

実際、ビールメニューの説明文は 100〜300 文字程度であることが多く、その中にビール初心者向けの前提説明も含める必要があります。

たとえば:

  • 「NZ」とは何かを説明する

  • そのスタイルの特徴を明示する

  • 前提知識がある前提で書かない

Craft Beer Market では朝礼時に当日のビールのテイスティングを行っていますが、それでも分かりやすさとシンプルさがないと説明はブレます。

導き出されたルールは明確でした。

1 銘柄 = 1 メッセージ


スタッフの説明負荷を下げるという考え方

複数のパネリストが、商品説明を「マーケティングコピー」ではなく、社内ツールとして捉えていました。

良い商品説明は、

  • スタッフの説明負荷を下げ

  • 自信を持っておすすめできるようにし

  • お客さまへの説明のブレを減らします

WPU では、メロンビールのために黒板にメロンのイラストを描くなど、一目で理解できるタップボードに大きな労力をかけている例が紹介されました。

重要な考え方は次の通りです。

タップボードが唯一のメニューである場合も多い。

効果的なタップボードは、

  • 色が分かる

  • 副原料が強調されている

  • 文章ではなくキーワードで構成されている

WPUのビール黒板

WPU では、色・ビジュアル・コンセプトを組み合わせることで、味わいが直感的に伝わるよう、1 枚 1 枚の黒板に時間をかけています。



インバウンド増加時代 —— 英語表記とネーミングの重要性

インバウンド客の増加も、繰り返し言及されたポイントでした。

  • 情報源がタップボードや看板しかない

  • スタッフが詳しく説明する時間がない

  • 日本語が読めないお客さまがいる

こうした状況では、

  • シンプルで覚えやすい名前

  • 分かりやすい英語表記

  • 発音しやすい言葉やカタカナの読み補足

の重要性が一段と高まります。

Gangi Brewing は、商品説明に英語と日本語の両方を併記している点が好例として挙げられました。

Gangi Brewingの英語と日本語の商品説明

価格は一律ではなく、文脈で決まる

価格についても率直な議論がありましたが、答えは一つではありませんでした。

共有された事例には、

  • すべてのビールを同一価格で提供する店舗

  • 原材料やコンセプトに応じて価格を変える店舗

  • 正当な理由があれば高価格帯でも提供する店舗

など、さまざまな形があります。

Craft Beer Market では、1 杯 1,090 円という価格設計から逆算し、送料込みでリットルあたり約 1,000 円前後のビールを好む傾向が共有されました。一方、他の店舗ではより柔軟な考え方も示されました。

重要なのは「安いかどうか」ではなく、

その店舗のコンセプトに価格が合っているかです。


会場参加ブルワリーのライブレビュー

当日は、Let’s Beer Works や 反射炉ビヤなど、会場にいた醸造所のビールについてライブレビューも行われました。

申し訳ありませんが、詳細はここでは公開できません。
参加者限定の内容でした。

ぜひ次回の Best Beer Japan セミナーにご参加ください。

Best Beer Japan セミナー 醸造所の商品のライブレビュー

バイヤーが語った、その他の実務的な現実

マーケティングではあまり語られませんが、実務上重要な点もいくつか挙がりました。

  • 納品日を選べること

  • 地元の醸造所を優先する傾向 (スタッフの地元、または店舗エリアとの結びつき)

  • フルケース単位での仕入れが負担になるケースがあること

    特に小規模な酒販店や、缶を扱うビアバーでは、1銘柄24〜30本のフルケースは在庫リスクが高くなりがちです。万が一、そのビールが想定ほど動かなかった場合、限られた冷蔵スペースを長期間占有してしまいます。


    そのため、缶のミックスパック(例:6種×4本、4種×6本など)に対応していることは、仕入れ判断のハードルを大きく下げる要素になります。

実際、こうした形に対応していることで、缶を扱うビアバーや酒販店はより注文しやすくなるという声も挙がりました。

こうした要素が、ビールの条件が拮抗した場合の決め手になることもあります。


クロージング:信頼は今も重要 —— 人間は人間なので

最後に、パネリストたちは率直に語りました。

多くの店舗は、飲んだことのないビールを頻繁には仕入れません。

醸造所訪問、テイスティング、日頃の関係性は、今も大きな意味を持ちます。

その上で、次のような仕組みがリスクを下げ、新しい出会いを後押しします。

  • Best Beer Japan プラットフォームでの送料無料キャンペーン

  • 分かりやすい商品情報

  • 今後Best Beer Japanが予定されている樽回収など、業界全体の物流改善

Best Beer Japan は、醸造所と店舗が出会い、実際に飲んで話せる機会を今後も増やしていきます。ぜひ次回のセミナーやテイスティングイベントにご期待ください。

醸造所向け(酒税・会計・バックオフィス業務の効率化):
https://www.bestbeerjapan.com/

店舗向け(300 以上の醸造所から仕入れ可能・登録無料):
https://craftbeerbeta.bestbeerjapan.com/account/register


最後に —— 醸造所向けセルフチェック

商品説明を公開・更新する前に、次の点を確認してみてください。

  • 5〜10 秒で理解できるか?

  • アルバイトが自信を持って説明できるか?

  • 最初の画像は、説明の役割を果たしているか?

  • これは「伝える」文章ではなく、「売る」ための文章か?

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